2011年5月25日水曜日

「俳優も音楽も照明も全てが素晴らしい!」万城目氏、語る。

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万城目学。

 

初めてこの名前を見た時、どう読むのかきっと頭を悩ませることだろう。

是非、この機会に覚えてもらいたい。“まきめまなぶ”と読む。言わずと知れた「鴨川ホルモー」「鹿男あをによし」「偉大なる、しゅららぼん」などのベストセラーを世に送り出している人気作家だ。

 

そんな万城目氏の「プリンセス・トヨトミ」が映画化され、いよいよ5月28日(土)より全国公開となる。

 

東京で完成披露記者会見が行われた当日、万城目氏に本作に関する面白い話を聞かせてもらった。


――まずは映画のオファーを受けた時の気持ちと、実際に完成した映画をご覧になっての率直な感想を聞かせてください
「まずオファーですが、とても嬉しかったですね。実際、とても変な話なんですよ。それをものすごく真面目に扱ってくれて、俳優も音楽も照明も全てが素晴らしかったです」


――映画化に際して要望は出したのでしょうか? またどの程度まで関わったのでしょうか?
「『鹿男あをによし』チーム(監督が鈴木雅之、脚本が相沢友子)だったので、あれこれ話す余地もなくお任せでした。脚本がアップされた時に見ましたが、そのままやったら5時間を越える大作になってしまうので、2時間ぐらいまでカットしなければいけないんですよ。そうなると、オリジナルどうこうではなくなります。だから原作者として“この要素がどうこう”というのはなかったですね。ただ、会食の場で、監督から『原作のなかで好きなシーンはどこなの?』と聞かれたんです。何も考えずに好きなシーンを素直に3つ挙げたら、その時はどれも脚本に入っていなくて(笑)」


――ちなみに、その3つのシーンを教えてもらえますか?
「1つは『さよなら、プリンセス』と旭が言うシーン、1つは松平が一人で泣くシーン、1つは鳥居が旭にボコボコにされるシーンです。それを監督は黙って聞いた後、『ちょっと考えておきます』って言ってくれたんです。でも、その後、脚本がどう変わったかは全然知らなくて、僕も試写を見て初めて監督からの答えを知りました。どこが入っているかは、皆さん、是非ご覧になって確かめてください」


――真夏の大阪ロケはすごかったですね。エキストラにはお父さんが参加されたとか
「ええ、父が参加してます。大阪府庁に5000人ぐらい集まって撮影した時にいたはずです。三交替制だったんですが、あまりに暑すぎて、しかもスーツ着用だったので一交替目で帰ってしまいました(笑)」

 

 

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――なぜ会計検査院を主人公に据えたのでしょうか?
「何が良いか色々探してたんですよ。大阪国がやってきたことに対して、東京から来た人間がかみついて、暴いていくわけです。たとえば、彼らの職業が警察官や検察官の場合、違法行為があったなら見逃すことはできない、税務署職員も脱税なら見逃すことができない。これらの職業には法律という客観的基準があってそれを守る必要があるんですね。でも会計検査院にはないんです。予算の使われ方が適正かどうか、それを法律に照らす必要がなく、主観で判断できるんです。無駄かどうかを判断する会計検査院だからこそ、大阪国との議論が意味をなすんですよ」


――鳥居と旭は原作と男女が逆になりましたね。これについてはいかがですか?
「『鳥居は綾瀬さんでいきたいんです! 松平は堤さんで! 真田は中井さんで!』と言われて、『そりゃ、すごい面々ですね!』でしたよ(笑)」


――玉木宏さんもこっそりたこ焼き屋のにいちゃん役で良い味を出していました
「本当は小川先生(『鹿男あをによし』に登場)役で出てくれたら面白かったんですけどね。ちょっと出るだけかと思ったら、綾瀬さんとの絡みもあって面白かったですね」


――茶子役の沢木ルカ、大輔役の森永悠希のふたりも好演でした
「府庁で撮影している時に、ちょうど待機しているセーラー服で坊主頭の森永君を間近で見たんですけど、あまりに非日常な外見に、それを書いた本人のくせに、ぎょっとしましたよ。しかも横にはご家族が見学に来ていて。『シュールやわあ』って思いました(笑)」


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――本作で一番好きなシーンはどこでしょうか?

「茶子と鳥居のタクシーのシーン、あそこでの会話とか好きですね。それから、もちろん松平と真田の対決シーンですね」


――原作にはないけど、映像ならではというシーンもありましたね
「戦国時代の合戦シーンは、やはり映像ならではの良さがありますね。そうそう、僕の作品と映像には不思議な符号があるんですよ。『プリンセス・トヨトミ』を執筆している時に、『鹿男あをによし』の放送が始まり、空堀商店街のお好み焼き屋(冨紗家)でロケが行われました。そして、そのお好み焼き屋を、原作の小説でも舞台として参考にしました。また、戦国シーンは彦根城で撮影したんですが、最新刊の『偉大なる、しゅららぼん』も彦根城を参考にして書いているんですよ」


奇想天外な万城目ワールド全開の『プリンセス トヨトミ』は、相当に奥が深い作品だ。舞台となる大阪の全面協力があったからこそだが、大阪府庁のシーンはまさに圧巻だ。

そして、それに負けない俳優陣の演技力、特に中井貴一、堤真一の素晴らしさは言うまでもないだろう。本作はエンターテインメントのエッセンスはふんだんに、一人の人間としてどのように考え、どのように生きていくのかを見つめ直すロードムービーでもあるのだ。

侮りがたし。そんな言葉が似合う作品だ。エンディングのケルティック・ウーマンが奏でる楽曲も胸に染み渡る。大阪の方は100%必須、いや日本全国の皆さん、是非とも劇場へ足を運び、万城目ワールドに存分に酔いしれてほしい。

   【Movie Walker】より

2011年5月10日火曜日

ケルティック・ウーマン 東日本復興支援で公開レコーディング

 

「奇跡の歌声」と称されるアイルランドの4人組ユニット、ケルティック・ウーマンが、3年ぶりに来日して東日本大震災の被災地復興支援のために公開レコーディングすることが決まった。

人気楽曲「ユー・レイズ・ミー・アップ」の歌詞の一部を日本語にした新バージョンにする。曲は、「着うたフル」で配信され、手数料を除く売り上げ全額が、日本赤十字社を通じて被災者の支援活動に役立てられる。

 

2005年結成のケルティックは、アイルランドの伝統曲をはじめポップス、クラシックなどにケルトミュージックのテイストをまぶして、透き通るような美しい歌声と躍動感あふれるフィドルの演奏でファンを魅了。照明や映像を駆使した幻想的なライブは、世界中で話題を呼んだ。

日本では、2006年のトリノ冬季五輪女子フィギュアで金メダルを獲得した荒川静香選手が、エキシビションで「ユー・レイズ・ミー・アップ」をBGMに使ったことから、ブレーク。収録アルバムは30万枚を超えるヒットを記録した。06、07年の2度来日公演を行っている。

 

今回は、エンディング・テーマ「永遠の絆~プリンセス トヨトミのテーマ」を歌っている映画「プリンセス トヨトミ」の28日公開に合わせて来日する予定だったが、3月11日に起こった東日本大震災の被害の大きさに心を痛めたメンバーが、チャリティー企画を提案。

特に「あなたが励ましてくれるから 山の頂にも立てる(中略)私は強くなれるのよ あなたの支えがあれば あなたが励ましてくれるから 私以上の私になれる」と歌う「ユー・レイズ-」は、今の被災地の人たちへのメッセージにも重なる。

 

ファンを招待した公開レコーディングをかねたイベントは、26日に東京・半蔵門のTOKYO FMホールで行われる。同局の番組「LOVE CONNECTION」(月-金曜午前11時30分)で応募を呼び掛け、家族や恋人など「永遠の絆を感じる人」100組200人を招待する。なお、楽曲は、TOKYO FM携帯サイト限定で6月上旬から配信される。

 

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「地方を元気に」 有川浩さん新作『県庁おもてなし課』

 

シリーズ『図書館戦争』や映画化された『阪急電車』など、多彩なテーマで人気作を発表し続けている作家、有川浩さんの最新作『県庁おもてなし課』(角川書店)が3月末に発売された。

 

有川さんの故郷・高知の県庁に実在する「おもてなし課」を舞台に、若手職員の掛水史貴が高知の観光振興という仕事を通して成長していく、爽やかな物語だ。

 

有川さんとおもてなし課との出会いは、職員から「観光特使」への就任を依頼されたことがきっかけだ。引き受けたものの、特使に何をしてほしいのか明確になっておらず、当初は「割とグダグダな対応だった」そうだ。熟慮の結果、「小説家として何ができるのか考えたときに、私が一番貢献できるのは小説を書くこと」という思いから、有川さんはおもてなし課の取材を始めた。

 

小説の中で、「お役所意識」が抜けず「グダグダ」なおもてなし課のメンバーたちは、観光特使に就任した作家の吉門喬介に次々と認識の甘さを指摘されたり、かつて「パンダ誘致論」という斬新な観光振興策を唱えながら、失意のうちに県庁を去った清遠和政らとの触れ合いを通して、少しずつ変化していく。

 

主人公の掛水らは、南国情緒あふれる日曜市や、豊かな自然を生かしたアウトドアスポーツなど、今まで当たり前だと思っていたものが観光資源になりうることにはじめはなかなか気づかない。有川さん自身も、高知を離れて関西の大学に進学したことで、こうした魅力に気付いたという。

 

地元の人間ほど、足元の魅力に気づかなかったり、無頓着だったりする。それは、地元を離れた者に対する地元の人間のまなざしにも共通していると有川さんは見る。

 

「地方出身の著名人が経験しがちなことですが、地元の人が一番地元の出身者に冷たい、というようなことがあったりします。ふるさとのために何かしたいという地元出身者の思いをもう少しくんでいただけたらと思います」

 

関西を舞台にした『阪急電車』にも高知の地酒がさりげなく登場する。有川さんの郷土愛の現れなのだ。

 

東日本大震災発生から3日後の3月14日、有川さんは自身のブログで、3月下旬の発売が決まっていた『県庁おもてなし課』の印税を全て被災地に寄付すると表明した。

 

「地方が元気になってほしいという願いをこめた作品なので、地方が大変なことになったときに、この本が応援しないのはウソだろう、という思いがありました」

 

また、「無事だった人」がエンターテインメントを楽しむことを後ろめたく思わないように背中を押す意味もあるのだという。

 

阪神大震災が起きた当時、有川さんは兵庫県尼崎市内に住んでいた。

 

「すぐ裏のアパートが崩れていたりしていたけれど、淀川を渡ると梅田(大阪)はいつも通りで、それが心強かったんです。これだけ隣の街が平然としているなら、西(兵庫)もちゃんとたてなおしてもらえるに違いないと思った。いま、日本全国が東北に対してそういう存在であらねばならないと私は思っています」。                                                                        (アサヒ・コム編集部 梅本響子)